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試訳 エウゲニコス『ノモフュラクスのエウゲニコスのトレビゾンド市への賞賛の模範文(エクフラシス)』

試訳 エウゲニコス『ノモフュラクスのエウゲニコスのトレビゾンド市への賞賛の模範文(エクフラシス)』


早いもので、本ブログ記事作成からもう2年である。
今日は聖ゲオルギオスの日であり、かつアレクシオス1世大コムネノスがトレビゾンド市を征服した日とされる日である。
今年に入ってからスコット・ケネディがミカエル・パンアレトス(パナレトス)の『トレビゾンド帝国年代記』とヨハネス・ベッサリオンの『トレビゾンドへの賞賛の演説』を一冊の英希対訳本Two Works on Trebizondとして世に出したのも記憶に新しい。
本稿ではミカエル・パンアレトス(パナレトス)の年代記、ではなく、エウゲニコスのトレビゾンド市の賞賛を訳出する。
底本はゴットリープ・ルーカス・フリードリヒ・ターフェルが出版したEustathii Metropolitae Thessalonicensis Opuscula Accedunt Trapezuntinae Historiae Scriptores Panaretus et Eugenicus (『テッサロニカ府主教エウスタティオス小品集:著述家パンアレトスとエウゲニコスによるトレビゾンド史への近接』以下、ターフェル版と表記)のp.370からである。
上に挙げたターフェル版については筆者が以前テッサロニカ府主教エウスタティオスについて調べていて『テッサロニカの陥落』のJohn R. Melville Jonesによる英訳の史料解題を読んでいたときに、以前ターフェル版上掲書をGoogle Booksでダウンロードしたのを思い出したため今回翻訳するに至った。ターフェル版にはパンアレトスの年代記も併せて収録されている。
本文は全20段落で、今回は3段落まで訳出する。
筆者の勉強不足のため、アラビア語ほどギリシア語を訳せないためかなり拙い訳になるが、ご容赦頂きたい。

ヨハネス・エウゲニコスについて


教会人であり著述家である。(1394?−1454~?)マルコス・エウゲニコスの弟のヨハネス・エウゲニコスは総主教職において、結婚した輔祭(ディアコノス)の公証人とノモフュラクス(法の守護者)の地位にいた。兄のマルコスのように、急進的な反教会合同派であった。その証拠に「コンスタンティノープルにスルタンのターバンを見るほうが、ラテン人の司教冠を見るよりましだ」という有名な標語の主であると教会合同賛成派言われたメガス・ドゥクスのルカス・ノタラスを合同派と付き合っていると「ラテン信仰の汚水溜」に落ちかねないと警告している(ハリス 2013 pp.179-180.)。
父はトレビゾンドで生まれ、15世紀中頃にエウゲニコスもこの街を訪れた。
様々な分野での作品があるが、その多くは未出版のようである。『コンスタンティノープルの陥落への葬送歌』などで知られる。また、ヨハネス8世パレオロゴスの妃となったトレビゾンド皇女マリアへの哀悼詩も修辞学上の断片として現存している。(Miller 1968 pp.80-81.)
『トレビゾンド市への賞賛の模範文(エクフラシス)』では、トレビゾンド市の周りの牧草地の森林の素朴な美しさと豊かな草木について歌っている。これはトレビゾンドを「世界の市場」と称えるベッサリオンとは対照的である(ヘリン 2010 p.363)。

本文


1.その都市はトラペズス、最も古く、少なくとも全ての東方において最も良く、海の中でも、客あしらいの良き海(=黒海)の最も美しい場所に位置し、周りの国々の君主の中で、太陽が登るのを直接綺麗に見ながら、美しき大地と海から、他方は歓迎されないかのような、ありとあらゆる優美さを頂き飾られた。また、もし、そこからある者が一斉にこの少女である都市を目の中に持つアシアの頭と目に一斉に呼びかけたなら、その少女が現れるという過ちを犯すことはないであろうと考える。
2.日が出ている時間は均等で、集住するには最適である。他方では、その頂点に道を譲るものはいないため、この点においては最良を獲得した。何故ならば、夏にかけては北風へと変わり、そこから海を通ってそよ風が吹く。地方全体では温暖で、ちょうど私はここで生まれて住んでいた。大都市中で隅から隅まで素晴らしく調和している。冬にかけてはちょうどポントスのアシアの中では妥当(な気候)である。
3.一方で、それ(アシア)自体とポリス全体は、ちょうど自身と城壁のような、孤独な地自身の周辺とは異なり、喜ばしき郊外都市に神々しく調和していた。他方では、諸都市自身と諸村落との外側に離れると、まさにあなたは諸々の純朴な住居と対岸の方ににいるだろう。それはキリストから宇宙同様に大きいと言われている。

参考文献


T. L. F. Tafel. Eustathii Metropolitae Thessalonicensis Opscula Accedunt Trapezuntinae Histriae Scriptores Panaretus et Eugenicus : Sumptibus Sigismundi Schmerber. Francofurti ad Moenum. 1832
A. P. Kazhdan. Oxford Dictionary of Byzantium. Oxford University Press.1991
Melville-Jones, John R. Eustathios of Thessaloniki. the Capture of Thessaloniki: A Translation with Introduction and Commentary. Vol. 8. Australian Association for Byzantine Studies. 1988.
William Miller. Trebizond the Last Greek Empire. Adolf M. Hakkert. Amsterdam. 1968
ジュディス・ヘリン(井上浩一監訳、足立広明、中谷功治、根津由喜夫、高田良太訳)『ビザンツ 驚くべき中世帝国』(白水社、2010年)
ジョナサン・ハリス(井上浩一訳)『ビザンツ帝国の最期』(白水社、2013年)
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